科目「人間の尊厳と自立」
第1節 人間らしさを守る権利と福祉の考え方
第4項 社会福祉の歩みから学ぶ人権と福祉の理念
❸ 個人だけの問題ではない「貧困」~社会福祉援助のはじまり~
19世紀後半のイギリスでは、慈善活動を調整する「慈善組織協会(COS)」が各地につくられ、困窮する家庭を訪問する「友愛訪問」が行われるようになりました。この訪問の当初は、援助を受ける必要があるかを調査し、生活態度などについて助言することが中心で、貧困を本人の努力や人格の問題として捉える考え方も残っていました。
しかし、実際に家庭を訪ね、一人ひとりの生活を見ていくと、失業や低賃金、過酷な労働、病気、劣悪な住環境など、本人の努力だけでは解決できない問題が見えてきました。
こうした事例が記録・蓄積されたことで、貧困には社会的な原因があり、個人への助言だけでなく、生活環境や社会そのものを改善する必要があると考えられるようになりました。
これは、現在の社会福祉援助にもつながる大きな転換でした。目の前の人だけを見て「なぜできないのか」と考えるのではなく、その人を取り巻く環境まで含めて考える。現代の介護や福祉にも通じる、とても大切な視点といえます。
参考文献
介護福祉士養成講座編集委員会,介護福祉士養成講座1人間の理解(第2版),中央法規,2022,p19
19世紀後半の慈善組織協会(COS)の活動を通して認識されるようになった、貧困に対する考え方として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1.貧困は、本人の性格や努力不足だけによって生じる。
2.貧困への対応は、道徳的な助言だけで十分である。
3.貧困は、失業や低賃金、劣悪な生活環境など社会的な要因によっても生じる。
4.貧困への対応は、家族だけが責任を負うべきである。
5.貧困者への支援では、本人の生活環境を考慮する必要はない。
※この模擬問題は今回の「介護の学びノート」に内容に基づいて作成しています。実際の介護福祉士国家試験の対策問題としての内容を保証するものではありません。
正答 3 友愛訪問などを通して、貧困には失業や低賃金、生活環境などの社会的要因が関係していることが認識され、社会的な対応の必要性が考えられるようになった。